世界で初めて開発された抗がん剤は、「マスタードガス」から生まれました。
マスタードガスは有名な毒ガスで、第一次世界大戦のころから使用されつづけ
てきた”化学兵器”です。
1984年には、国連の調査によりイラク軍がこのガスを使用したことが判明。
世界的に非難が高まりました。
ご記憶に残っていらっしゃるかたも多いと思います。
人体を構成する蛋白質やDNAに対して強く作用し、その構造を変性させたり、
遺伝子を傷つける事により強烈な毒性を発揮します。
皮膚や粘膜などを冒すほか、”細胞分裂の阻害”を引き起こし、皮膚や肺をた
だれ(糜爛=びらん)させ、死にいたらしめます。
第二次世界大戦中に研究が進み、細胞分裂を阻害する機能が着目され、いくつ
かの改良が行われ、現代の「代表的な抗がん剤」になりました。
「毒を以て毒を制す」の故事のとおり、がん細胞に対しては高い殺傷力があり
ます。
ただ、起源はやはり”毒”ですから、正常な細胞に与えるダメージも大きく、
副作用の強い薬として知られています。
毛髪が抜けてしまったり、口内炎、下痢、嘔吐など投薬中の体調不良は筆舌に
尽くしがたい苦悩になります。
それにもかかわらず、現在でも日本では多くのがん患者に使われ続けています。
2015年11月、世界保健機関(WHO)は「がんの原因となる116種類の要因」を
公式に発表。
そこには、「喫煙」「紫外線」「エックス線・ガンマ線」「アスベスト」「加工肉」など
が列挙されていますが、なんとマスタードガスを起源とする「抗がん剤」も
含まれていました。”驚き!”です。
抗がん剤は、がん細胞を小さくするかもしれませんが、人体には有害です。
米国では、1980年代から「抗がん剤は、がんを治さない」ことが常識化して、
抗がん剤を使わない治療法への取り組みが盛んにおこなわれています。
この分野で日本は数十年遅れているといわれていましたが、10月1日、京都大
学特別教授本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞されました。
先生の研究「免疫療法」は、従来の「手術」「エックス線」「抗がん剤」の三
大治療に加え新しい治療法を提供するすばらしい基礎研究です。
(※免疫療法とは自分の免疫を対外で培養して戻すのが一般的で今回は、
薬品ですが 免疫に作用するため その分野に入っているそうです)
今後、先生の研究を元にすばらしい治療方法が開発されることを切に願うばか
りです。