治療の効果を高めるという意味でも、ガンへの恐怖‐をぜひ脱却してほしいと思っています。
恐怖心を抱くと人間の身体はどうなるのでしょうか?身体はこわばり、血行が抑えられます。つまり、恐怖を抱くということは、交感神経を緊張させることであり、それは免疫カを低めてしまうことにつながるのです。自分の恐怖心が病気をよび、病気を重くしているのです。
前にも述べましたが、ガンは自分の生き方のゆがみ、まちがいから生まれたものですから、基本的にはそれを直せば、治ります。進行ガンでも、六七割は治癒に向かうのです。
その事実をしつかりと認識してください。ガンになったらどうしよう、と不安になったり、あるいはガンが治つてからも再発を怖れてびくびくしていると、それがガンをよぶのです。
まさに発ガンをよぶ体調をつくるのが恐怖心なのです。ガンの治療の第一歩、そしてガンの予防の第1歩は、ガンへの恐怖心から脱却することなのです。
現代医療がガンの痛みをもたらしている多くの人がガンを怖い病気だと思っている理由の一つに、ガン患者の杜絶な苦しみ、痛みのイメージがあります。何時間にも及ぶ大手術を受け、疲弊し、すっかり体力を落としてしまう患者の姿。抗ガン剤治療や放射線治療の副作用でやつれ、髪が抜け落ち、ごはんも食べられない状態を見て「ああガンは恐ろしい」と大きな恐怖感を抱くのも当然です。
しかし、よく考えてみると、これらのガンの苦しみは、ガンそのものがもたらしているものではないのです。身体が病を脱却しようと起こしている治癒の反応を押さえつけるような薬物を投与したり処置をしたりしているせいなのです。薬の押さえ込みに反発し、みずからの力で病を脱却しようとする生命力が起こす、そのせめぎあいが、あのような苦しみ、痛みを生んでいるのです。というのも血流を増やす反応は、強く起こったときは痛みを伴うからです。
となれば、生体の反応、免疫システムを抑えつけるような治療をしなければ、あれほどの痛みや苦しみはそうそう起こってはきません。
もちろん、治療の過程で、発熱や痛みが短期間でることはあります。しかし、いつまでも見込みなくずるずると苦痛と消耗が続くことはありえないのです。結局、あのガンの壮絶な苦しみのほとんどは、現代医療が生みだしているものなのです。
ガンの痛みや発熱は、身体が失われた血流をとりもどそうとしている、いわば治癒反応です。だから、強い薬をつかって免疫を抑えれば抑えるほど、薬が切れたときにでる反応、リバウンドが激しくつらいものになります。さらに、いまのガン治療では、抗ガン剤治療で免疫を徹底的にたたいた後に、もうどうにも痛みが抑えられないところまでくると、今度はモルヒネなどの麻薬で痛みを緩和するというケアにはいります。
しかし、モルヒネを含めた麻薬というのは、すきまじく強く免疫抑制を行い、交感神経を緊張させるものです。すると、いかに麻薬といえども、薬は切れるときがきますから、するとこんどは抑えこまれていた痛みがものすごい勢いではねかえるようにでてきます。そして、ますます免疫力が低下していくことになります。
また、薬で交感神経を徹底的に緊張させているわけですから、体力の消耗も激しくなります。
熱や痛みのあとでガンの自然退縮か起こる四ヵ条を実践すると、ガンの増殖が止まります。そして、リンパ球がある程度増えると、ガン組織の自然退縮がはじまります。
この治癒の現象が、日常茶飯事のごとく起こるのを私たちの仲間の臨床医たちは目のあたりにしてきました。同時に、副交感神経を優位にする治療の過程で、三分の二ぐらいの患者さんが、熱がでてだるい、あるいは節々がすごく痛むというような、ちょうど自己免疫疾患と同じような症状を体験します。そうした症状を体験した、そのあとにガンの自然退縮が起こってきます。
では、こうした不快な症状は、どうして起こるのでしょうか。ガン細胞を攻撃するのは、おもにNK細胞、胸腺外分化T細胞、傷害性T細胞と自己抗体産生のB細胞の四種類です。これらの白血球の細胞がガンをたたくときには、必ず炎症反応が起こって、発熱、痛み、不快を伴います。あるいは下痢をすることもあります。肺ガンなら咳がでてきたりします。大腸ガンだと血便がでたりしますし、膀胱ガンだと血尿がでたりします。それが、治癒に向かっている反応なのです。
もう少しくわしくメカニズムを説明します。副交感神経というのはリラックスの神経ですが、急激に活性化されると、プロスタグランジン、アセチルコリン、ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエンなどの物質をだします。これらはどれも、発熱や痛みをだす物質なので、不快な症状が現れます。ところが、ふつうの患者さんも、免疫のことをきちんとわかっていない医師たちも、こういう症状が治癒の過程で自然に起こるということがわかっていなものですから、つい、症状を止めたくなるのです。
そのため、鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、とくに、ステロイド剤を患者に服用させてしまいます。もちろん、痛みとか発熱が止まりますから、そのときは元気がでてきます。しかし、これは、治癒反応を止めているわけで、ガンを根本から治していくという意味では、まったく逆効果なことをやっているのです。
じっさいには、ガンの自然退縮につながる治癒反応がはじまると1週間ぐらいは寝込むようなつらい症状が続きます。その後、リンパ球が増えてがんが退縮しはじめます。だから、ガンの患者さんで、免疫活性療法で治していくというつもりの人は、この反応をぜひ覚えておいてほしいと思います。この反応がわからないと、症状の変化に不安になるし、事情を理解していない医師に相談してしまえば、薬をだされて、治癒症状を止められてしまいますから、注意が必要です。
じつは、この治癒反応は昔から、傍腫瘍症候群(パラネオプラスティック・シンドローム)という名前で、ガン患者の治癒過程で必ず起こる反応として知られていました。ところが、忘れ去られてしまったのです。戦後、抗ガン剤を使うようになって以来、この反応がでなくなってしまつたからです。免疫が活性化して攻撃する反応ですから、抗ガン剤を使って免疫を抑制する治療が行われると、当然この反応が起こらなくなります。
傍腫瘍症候群の中で、昔からいちばんよく知られているのは、黒色肉腫、メラノーマが自然退縮するときの反応です。発熱して、節々が痛くなり、その後で、アルビノ(白子)状態の斑点がでてきて、黒色肉腫が自然退縮します。これは自己応答性T細胞(胸腺外分化T細胞)や自己抗体が、ガンの黒色肉腫細胞と正常のホクロ細胞をまとめて攻撃したからなのです。
黒色肉腫は、皮膚の上、目に見えるところにあるから、この反応がいちばんわかりやすくて知られていたわけですが、もちろん、これは黒色肉腫だけではなく、ほかのガンでも起こることです。
先ほど述べた、発熱、痛みのほかに、しびれなどの神経症状もでてきます。これは、ガンが上皮で起こるものであるためです。上皮には神経が張りめぐらされています。ですから、ガンが攻撃されると、即座に神経も刺激を受けます。すると末梢神経刺激が興奮してきて、しびれや痛みがでるのです。
傍腫瘍神経症候群(パラネオプラスティック・ニューロロジカル・シンドローム)とよばれます。この反応も、覚えておくとよいでしょう。
だから、もし免疫活性の治療にとりくんでいる過程で、こうした不快な症状が現れたら、すぐにそれを止めようとしないで、治癒反応である可能性を考えてください。もし治癒反応だと判断できたら、その症状を少し耐えて乗り越えましょう。すると、その先には、ガンの自然退縮が待つています。
安保先生の書籍「免疫革命」より抜粋、安保先生について詳しくはこちら |